「お水取り」 別火入り 撮影:今駒清則
 |
20日夕刻になると参籠する練行衆(れんぎょうしゅう)が東大寺境内にある戒壇院(衛星写真地図)の別火坊へ向かいます。初めて参籠する新入(しんにゅう)はもうすでに別火入りをしてベテランの練行衆を待ち受けます。
別火坊ではさまざまな準備が練行衆の手伝いをする童子(どうじ)や仲間(ちゅうげん)らによって準備がされていています。練行衆はここで俗とは決別し、厳重にお祓いをして精進潔斎の合宿生活をします。
別火とは練行衆が俗世とは別な火を使うということで、精進潔斎に努める意味です。実際に別火坊では新しい火を切り出します。練行衆やその他修二会にかかわる方々はこの火だけですべてを賄います。俗とは一切を決別する、そこで練行をする、という決意が表されています。また穢れを嫌い練行を妨げる魔物が入らないようにお祓いや結界などもします。これは神道や仏教を超えた古代からの人間のこころがそのまま修二会にかたちとなって伝承されています。
「お水取り」 試別火の練行衆 撮影:今駒清則
 |
別火坊では平衆(四職以外の練行衆)は四職の部屋に分かれて合宿していますが、まだ結界、潔斎のレベルが多少低いので、別火坊の部屋に外部の私たちが入ることはできますが、寒くても練行衆の火鉢にはあたることはできません。
また動物にかかわる食事や身の回り品も厳禁です。今はどうなのか分かりませんが、かって厳しい練行衆はウールの着衣も嫌った、と聴いています。ですから私が取材していた時は着衣は全てを綿・ポリ製品で、寒いので本当は羽毛のジャンパーを着たいのですがポリのものに、東大寺にいる時はうどんなどできるだけ精進ものの食事をしていました。
また僧も身内に不幸があると練行衆にはなれませんし、外部の私たちでもそういった場合には遠慮して修二会には参りません。現在ではこのようなことが厳格に守られている法会は他にあまり無いのではないかと思います。(なお別火坊内部は一般の方の参観はできません)
修二会を詳細に記録した今駒清則写真集『南無観』についてはここをご覧下さい。
|