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東大寺二月堂 修二会 行法

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3月13日修二会  今駒清則


「お水取り」 内陣に置かれただったん松明  撮影:今駒清則

3月13日は六時の法要に加えて「走り」「だったん」の法要が勤められます。「だったん」は「達陀」と書き、その行のいわれにはさまざまの説がありますが、私は追儺(ついな、鬼追い)の一種ではないかと思っています。ただ他にはない独特の行法です。

 内陣で後夜の大導師法要が始まると、隣の席の和上が火天が使う火を火吹き竹を使って熾します。最高位の和上が一所懸命に火吹き竹を吹いているのはユーモラスでもあります。
 堂司と平衆は「だったん」に備えて金襴のだったん帽を冠り、衣の袖を巻くなど身支度をし、内陣に置かれた達陀松明を整え準備をします。呪師の法要はいつもと変わって「だったん」を勤めるための采配と祈りをします。
 戸帳が再び巻き上げられて内陣正面が明らかになると、堂司と平衆が八天(水天=香水、火天=火、芥子
(けし)=ハゼ、楊枝、大刀、金剛鈴、錫杖、法螺貝)を勤め、内陣正面に左右からチョコチョコと出てきて、飛び上がり持物を礼堂に撒いたり鳴らしたりします。厳粛な法要の中で思いがけず滑稽な所作で、初めて見る参拝者はあっけにとられている間に終わります。
 呪師が「奉請火天水天芥子楊枝・・・」と唱えると法螺貝が「ブーブッ、ブーブッ・・・」と吹かれ、内陣に置かれているだったん松明に堂司と大導師が点火し、火天が抱えて内陣正面に出ます。

「お水取り」 だったんの松明と水天  撮影:今駒清則

 戸帳が上げられた内陣正面へ出てきた火天は、燃え盛るだったん松明を抱えて跳びながら礼堂に突き出します。それに合せて水天も飛び跳ねながら洒水器で加持し、また鈴と錫杖が賑やかに鳴らされます。数回の加持のあと内陣に入り、内陣を一周りして再び正面に出て松明を突き出します。松明の炎は高くまで上がって内陣の天井を焦さんばかり、煙りも内陣や礼堂を覆っています。礼堂では役人が箒で飛び散った火の粉をジク(土間)に掃き落とします。

 松明の火が衰えかけると正面で松明を立てた後、礼堂に向けて傾け投げ出します。まだ燃えている松明は時には礼堂で聴聞している娑婆古練の膝元まで飛んで行くこともあります。火天は松明を引取り再び立てて3回床を突いて内陣に入れ、戸帳が堂童子によって降ろされると「だったん」の法要は終わります。僅かの時間の大スペクタクルに息を呑んで見守っていた聴聞者のため息も聞こえてくる静けさが訪れると後夜の呪師作法が始まります。すぐに短い晨朝法要があり、一日の練行が終わります。

(注:ハゼ=糯米を炒ってハゼたもの)


修二会を詳細に記録した今駒清則写真集『南無観』についてはここをご覧下さい。


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