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雷光の乱舞  撮影:今駒清則

2007年6月9日0時9分 西方の空一面に光る
Nikon D2X AF-S NIKKOR 80-200mm 1:2.8 D
80mm / F8/ 10sec / ISO 100


 低気圧の襲来で空模様がどんどん変わってきます。空を撮影するにはもってこいの良い条件です。夜になって遠くで音がします。遠雷ですので web で場所を確かめて待ち受けます。夜半になってちょうど撮影に良い所へ雷雲が近づいてきました。まず望遠レンズで見当をつけてセットします。雷光の一般的な撮影は長時間露光をして雷光が写り込むのを待つのですが、昔から私の撮影は、シャッタースピードを1秒にして、空がほんのわずかに変化したと思った時にシャッターを切ります。これは空が明るい時の雷光でも対応できます。ほとんど「予感」に近いのですが、これは訓練されたカメラマンが持つ予測能力です。かなりの確率で雷光が撮影でき、フィルムの無駄がありません。このためには俊敏な反応能力と、タイムラグ(シャッターを押してから写るまでのわずかな時間)の極力少ないカメラが必要です。これにはNikon D2Xが最速のデジタルカメラで最適です。それをさらにミラーアップして待機します。これはミラーの跳ね上がるロスタイムを無くすためです。

 しかし今回は雲が厚く、まったく事前の変化がつかめません。雷光があってシャッターを切っても写らないのです。仕方ないので長時間露光にして偶然を待ち受ける方法にしましたが、デジタルカメラはフィルムと違って暗い所を良く写しますので、空が明るくなり過ぎてあまり長い長時間露光はできません。そこでインターバル設定(一定時間ごとに自動的にシャッターを切る設定)にしてカメラ任せにしました。カメラは10秒露光を繰り返しますが、シャッターが切れた後、長時間露光に対するノイズ処理などに約10秒が必要でその間はシャッターが切れません。つまり約10秒間の空白時間があるのです。これには参りました。その間に限って良い雷光があるのです。そこでもう1台を同じ様にセットして、2台でできるだけ空白時間を少なくして得たうち一枚がこの写真です。結果カメラ任せにした500カット位の写真にはあまり良いものがありませんでした。もちろん何も写っていないカットは消去します。残ったのは20カット位でした。これでは写した実感がありません。やはり今か、今かと息をつめてわずかな変化を待ちうけて撮った写真とは違います。ただし、でき上がった写真を見ていただく方にはその差はわかっていただけないところなのですが。ちょうど海釣りのフカセ釣りで魚の喰いをききながら釣り上げる愉しみと、投げ込んだままの置き釣りで上げてみたら釣れていたというのと似てますね。釣り上げられた魚だけ見れば同じなのですが。

 そのうちに雷雲が近づいてきて頭上で光るようになります。こうなると超広角レンズを使って見上げて狙うのですが、当然雨も降ってきます。雨あしが強くなるともうお手上げです。これをどうしたら撮影できるか、また危険回避は、とこれから考える課題です。(仕事でもないのにそこまでしなくても、と一方では思うのですが)

 雷光の撮影は被雷の危険が伴う場合があります。私は建物の中のベランダからですので大丈夫と思っていますが、中国・内蒙古の呼倫貝爾(フルンボイル、ホロンバイル)草原の撮影ではたびたび雷雲に巡り会いました。遠くで光っている場合は良いのですが、近づいてきたら撮影は止めて車の中に退避します。真っ平らな草原に車以外は私と三脚以外に高いものはありません。素晴らしい光景ですので本当は雷の風景を撮影したいのですが、命あっての物種、といいますので我慢ぜざるをえません。ついでに思い出したのは、宿泊していた海拉爾(ハイラル)のホテルへ真夜中に落雷したことがありました。ぐっすりと寝込んでいたのですが、あまりの明るさに目が覚めてベランダの方を見るともう目も眩む雷光の連発。早速カメラを持ってガラス越しにでも、と思いましたが、いつまでも続く雷光のそのすさまじさに窓側へはついに近寄れず、部屋の奥で見続けるしかありませんでした。あれほどの明るさというのは未だに他に体験したことがありません。  (2007.6.9 今駒清則)