買い物のついでに近所の古書店で100円均一本をちょっとのぞいてみたら岩波写真文庫38の「長崎」がありました。普通500円から1,500円もするのでワケありかな、とよく見てみても三刷ではあるがなかなかの美本、コレクターではないので初版本でなくてもOK。もしかしたら家にあるのと重なっているかな、とは思ったのですが調べるのも面倒で早速購入。家には100册ほどの岩波写真文庫と、今の復刻ワイド版も少しあります。
長崎は私の好きな町の一つ。何度も出かけています。必ず行くのが館内町の唐人屋敷跡、原爆では山陰になっていたので直接の被害はありませんでしたが、昔の建物はまったくといってよいほど残っていません。だから観光客は中国寺院以外にほとんど見るものはないのですが、それでも私は古地図を見ながら歩きます。あまり変わっていない道筋や石垣など、道端のそこここに名残りと思われるものがあります。これを探すのがとても面白いのです。
写真では長崎大学の「幕末・明治期日本古写真メタデータ・データベース」にある、幕末の日下部金兵衛が撮影した唐人屋敷の「館内から出島を望む」古写真をもとに、1997年に私が撮影した写真と比較してご覧下さい(建物などの関係で同じ場所には行けないので多少近景は異なりますが、中央の観音堂は建て替えられ、左右の丘は住宅が立ち並んでいます)。今では住宅地になったこの唐人屋敷跡も都市計画道路や街づくり計画があり、今後急速に変化していくことが予想されます。
この岩波写真文庫38「長崎」は1950年までの終戦直後に撮影されたものですが、原爆による被害の風景は浦上以外に見られません。GHQに配慮したのか記述も控えめです。最も変化したのは新地(中華街)で、蔵が立ち並んでいる写真があり、幕末の唐人蔵を偲ばせますが、現在の新地には礎石や石垣の名残りはあるものの、蔵はまるで見られなくて店鋪と観光客があふれた街になっています。
古地図が証明し、一枚の古写真が語り、1冊の写真集が長年の人々の営みを伝える。歴史を視つめるのは楽しい時間です。
明日11日と12日は例年のごとく奈良・興福寺・春日大社での薪御能の撮影。今年の薪御能パンフレットの表紙は私の写真です。(2007.5.10)
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